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「最低賃金改定は“制度の気づき”のチャンス──業務改善助成金を活かすために必要な視点」(2025.10.28)

社労士とお客様をつなぐテーマを発信してまいります。今回は「制度の気づきシリーズ(第1回)」です。

毎年秋に告示される最低賃金の改定。2025年度も例外ではなく、栃木県では9月18日に新しい最低賃金(例:1,068円)が告示され、10月1日から適用されることとなりました。
この改定に合わせて注目されるのが「業務改善助成金」です。これは、事業場内最低賃金を30円以上引き上げることで、設備投資や業務改善に対する助成が受けられる制度です。

しかし、制度の要件をよく見ると、現場では、思わぬハードルに直面することもあります。
助成金の申請には「最低賃金の適用日前に賃金引上げを実施しておくこと」が求められます。つまり、告示日から適用日までの約2週間で、賃金規程の改定・労働者代表との意見聴取・労基署への届出・賃金引上げの実施をすべてを短期間で整える必要があります。

このスケジュール感は、制度を初めて知った企業にとっては極めて厳しいかもしれません。
実際、助成金の活用に成功する企業の多くは、社労士や支援機関との顧問契約を通じて、事前に制度の準備を進めています。
一方で、非顧問企業や労使協議に時間がかかる企業では、「制度の説明をしている間に申請期限が過ぎてしまう」という現象が起きています。

だからこそ、私たち社労士の役割は「助成金の申請代行」ではなく、「制度と現場の間をつなぐ翻訳者」であるべきだと感じております。
助成金を取るために制度を整えるのではなく、制度を整えておくことで助成金が活用できる──この順序を伝えることが、現場に納得感をもたらします。

最低賃金改定は、単なるコスト増ではなく「制度整備のきっかけ」でもあります。
今年間に合わなかった企業も、来年度に向けて制度整備を始めることで、次の助成金活用のチャンスをつかむことができます。
「制度の気づき」を「制度の備え」へ──その一歩を支援することが、社労士としての本質的な役割ではないでしょうか。

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